前半の木嶋さんのコンチェルトは全体的にはロマンティックな演奏で、大植&東響もそれに絡みつくように濃厚な音楽を展開していくのだが(やっぱり大植さん、コンチェルトの指揮が上手いな〜)音そのものは彼女らしいピュアな透き通るような音が印象に残った。あと、木嶋さんてテレビ番組(たぶんバラエティに?)に出てらっしゃるのかな?コメントを見てるとニコ生民にも結構知名度が高くて驚いた。
後半の同じくチャイコフスキーの交響曲題4番は、大植節が前回の演奏に心の中で快哉を叫んだ。ニコ生のコメントでは大いに盛り上がっており、好意的な評価が圧倒的だったが、twitterでは賛否が両極端だったのが面白い。
確かに、テンポやダイナミクスの変化は大きく、クラシックを聴き込んでいる人ほど過去の演奏と比べて違和感を感じたのも理解できるが、大植さんの音楽は心を真っ白に来て聴く(というよりも真っ白にさせてくれる)のが一番楽しめる聴き方なのだ。
僕はチャイコフスキーの交響曲の中では、あまり聴かない曲なのだが、その理由は金管大運動会になってしまいがちなこの曲で、チャイコフスキーの旋律美というようなものが(5番や6番、マンフレッドに比べて)感じにくいということがある。
白眉だったのは第2楽章で、オーケストラが深い呼吸をしながら深い深い世界に入っていくような演奏に酔いしれた。
音楽って、瞬間、瞬間の美しさが大事。現れては消えていく儚い芸術であり、時間軸でメロディーやストーリーを追っているのは聴手の脳内で処理しているに過ぎない。
大植英次は、その儚さの中に燦然と輝く世界を現出させることができる数少ない指揮者だと再確認した。
今回の演奏を素晴らしいものにしたのは、大植さんの描く世界を東響のメンバーが深い共感を持って受け入れたことも大きいのだろうな。その様子は動画をみれば一目瞭然。
去年の緊急事態宣言中から始まった東響のニコ生配信。今回も3万人を超える視聴者があったそうで、これはやっぱり凄いことだな。