天井桟敷のつぶやきver3.1

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『第2期』シェレンベルガー&岡山フィルの体制を見据えて(その3)

 
 「ぶり」が付いてきたので、引き続きの更新です。シェレンベルガー&岡山フィルの『第2期』への提案第3弾。
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(岡山シンフォニーホールのステンドグラス)
 今回はオーケストラの体制整備について、ですが・・・当然、素人にはテクニカルな事は解らない。
 しかし、オーケストラ・ウォッチャーとして提案したいのは、ただ1点の公約を掲げ、それに向けて関係者が尽力すれば、この問題を前に進めることが出来る、ということ。
 
 そんな、魔法のようなことがあるんかいな?     あるんです。
 
 シェレンベルガー氏が契約更新をする際に、記者会見を開いてもらいます。そこで、シェレンベルガー氏が、こう宣言するのです。
 
「岡山フィルハーモニック管弦楽団は、日本オーケストラ連盟の加盟を目指します」
 
 会見には岡山市長(無理なら市の偉いさん)も同席します。そこで岡山市長がこう宣言する。

「ファジアーノ岡山も念願のJ1昇格に向けて盛り上がっている。シーガルズもVリーグで、湯郷ベルもなでしこリーグで、みな国内各都市のトップチームと戦っている。岡山市は文化でも国内のトップレベルを目指す。その目玉として岡山フィルは、N響や大フィルなど日本のトップオーケストラがひしめく、日本オーケストラ連盟への加盟を目指します』
 
 日本オーケストラ連盟というのは、日本国内の30以上のプロ・オーケストラで組織される団体です。加盟には一定の条件をクリアすることが必要です。

 もちろん、J1への昇格とは違って、オケ連盟へ加入するのと実力が認められるのは全く別問題だということは、私だってわかっています。そこはそういうストーリーを使って盛り上げていく、というしたたかさが必要だと思います。。
 
 このアイデアは先例があります。2008年に日本オーケストラ連盟への加入が認められた静岡交響楽団のホームページには
「2008年、承認条件が難しく永年の夢であった社団法人 日本オーケストラ連盟の準会員の承認を受け、名実ともに一流オーケストラの一員となりました。」
との文言があります。
 
 これを見て以来色々と調べて「なるほどなあ~」と思った。クラシック音楽に関心が無い一般の市民の関心を引くには、分かりやすいストーリーのプロットが必要。静響は、そのストーリーとして「日本オーケストラ連盟に加盟が認められ、一流のオーケストラになった」というプロットを使ったわけです。
 
 日本オケ連加盟に向けた宣言にあたっては、当然、岡山市側の支援を取り付け、巻き込まなければいけません。これは必須条件です。しかし「岡山フィルの日本オーケストラ連盟への加盟」をなんとかして政策目標として盛り込ませさせればこっちのものです。
 
 お役所の習性として、①政策目標としていったん掲げられたものはなかなか引き下がれない、というものがあります。それを逆手に取ることが出来るのです。
 
 日本オーケストラ連盟はまず準会員として加盟します。準会員としての加盟の条件は、実はそれほど難しくない。
(1)「管・打楽器」と「弦楽器」を擁するプロフェッショナルの合奏団であること。
(2)プロフェッショナル・オーケストラとしての演奏活動実績が2年以上あり、定期演奏会をはじめ年間30回以上の演奏活動を行っていること。
(3)演奏者の構成員は他の会員のオーケストラと重複していないことを原則とする。
(4)演奏者の構成員は半数以上が固定的に在籍していること。
(5)専門の経理担当者、楽譜係、舞台担当者を擁する事務局組織を持っていること。
 
 岡山フィルは(1)(2)(5)は文句なしにクリアしていますし、(3)(4)も恐らく大丈夫でしょう。それほど難しいミッションではない。
 
 そんなにうまく岡山市が関与してくれるか?ことなかれ主義の岡山市は動かないんじゃないか?という意見もあるでしょう。
 
 しかし私はここ5年で、お役所の体質が(よくも悪くも)劇的にまで変化しているとみています。

 というのも、あまり世間では知られていないことですが、今や公務員も成果主義で評価され、ボーナスはおろか、査定によって昇給額が変わって来るようになっています。年功賃金が居る程度維持されたまま、目標達成度の成果主義で査定されると、どういうことが起こるか?勝ち組の政策に乗っかり続けた場合、退職時点で数百万の違いが出ることだってありえるということです。
 岡山市も、ここ近年、「伝説の岡山市」キャンペーンや西側緑道公園や石山公園のイベントなど、なんかイベントごとに力が入っていると感じませんか?
 それは、そのイベントが成功すると関係したお役人さんの評価もお給料も上がるようになったからです。

 このお役所の力学のベクトルが変わった今を逃す手は無い。政令指定都市としての成熟した文化都市を目指す岡山市が「オケ連加盟(準会員)」というわかりやすくも実はハードルが高くない(評価目標になりやすい)コミットメントを掲げ、それに役所の人事力学を絡めて色々な人を巻き込んでいくわけです。「これは自分たちの評価が上がるタネになる」と思わせれば、後は勝手に動いていきます。
 
 岡山マラソンなんかが典型例で、あのイベントって2万人の参加者から1万円の参加費を取って2億円集めて、走らせるのは公道なわけですから大失敗のしようが無いんですよ。私は他所の街の猿真似にしかならないこのイベントは斜めから見ていますが、これだけ色々な都市が手を出すほど「失敗の少ないおいしいイベント」であることは認めます。そうすると、お役人さんは自分の評価が上がるこのイベントに乗っかろうとする。スポーツ課だけでなく観光から広報から、はては福祉部門まで、様々な部署の人が関わろうとしますから、巨大組織の役所が一体となってどんどん事業が進んでいったわけです。
 
 こういうお役所の習性である②成果主義の導入による「勝ち馬に乗る」という人事力学、をうまく使わない手はないということ。
 
 あと、もう一つ戦略上重要なファクターがあります。オケ連準会員加盟にあたっての条件、特に注目すべきは『(3)演奏者の構成員は他の会員のオーケストラと重複していないことを原則とする』、これなんですよ。ここでまた私、悪知恵を考えました(笑)
 
 役所の習性③:役所は(人口規模・財政力で)ライバル関係にある自治体の後塵を排することを嫌う
 
 この習性、結構強烈にあるんですよ。私も市役所の人と交渉するとき「こんなこと、高松や福山でもやっていますよ」っていうと、市の反応が変わることが多いんです。民間でいえばライバル関係にある同業他社のような存在を引き合いに出すわけです。これが例えば「神戸や広島では常識ですよ」とやると、『あちらさんは人口も経済も規模が違いますから・・・』とハナから乗ってきません。
 
 ここで、準会員の加盟条件の(3)他の会員のオーケストラと重複していないこと、がポイントになってきます。
 岡山フィルの団員さんは、実は対岸の高松にある瀬戸フィルとメンバーが何割か重複しているんです。今は演奏手当のみの報酬体系だから、両方の楽団に登録して何ら問題は無い。 
 でも、先に瀬戸フィルが日本オーケストラ連盟に加盟するような事態になったら?瀬戸フィルと重複して活動する奏者を、岡山フィルの団員として申請することが出来なくなるんですよ。そうなれば日本オーケストラ連盟への加盟へのハードルが一気に上がる。
 
 実際に高松市なり香川県なりが本気を出したら?という可能性は無くはないんですよ。たとえば瀬戸内国際芸術祭、主催者は香川県です。プロデュースはベネッセグループの総帥:福武総一朗氏。岡山屈指の財界人が岡山県ではなく香川県と手を組み、見事にあれだけのイベントを成功させ、香川県の長年の課題であった離島振興に大きな成果を上げた。このことは岡山の行政関係者に大きなショックを与えたようです。

 その証拠に、岡山では来年に『第1回岡山国際現代芸術祭』を開催することが決まっています。明らかに香川の後追いですが、それだけライバル関係にある自治体からの刺激が有効であることを表しています。
 瀬戸内国際芸術祭で水を空けられ、この上、瀬戸フィルが「中四国2番目の日本オーケストラ加盟のプロオーケストラ」として先を越されたら、岡山は文化事業において香川に対して周回遅れともいえる差をつけられることになります。

 岡山フィルの関係者の、皆さん。この際、岡山の文化行政関係者の危機意識を煽りに煽って、岡山フィルの成長につなげるという強かな戦略を取りましょう。
 
 考えてもみてください。今まで岡山市は都合のいい時だけ、「オーケストラのある街」と言い、イベントなどで「ええ恰好」している一方で、岡山フィルへの補助は絞られ、運営はマンパワーに頼り、組織も脆弱で財務は常に火の車。何より悲惨なのは、プロの音楽家がプロとして処遇されないから次の世代が育たない。設立時には在京オーケストラ奏者の方など、かなりの人材を集めて結成されましたが、創設時のメンバーもいつまでも健在というわけには行きません。これって、いわゆる『限界集落』と同じ構図じゃないですか?
 今はシェレンベルガーという稀代の指導者が来て、芸術面でも運営面でも勢いがついていますが、これはあくまでカリスマ頼みのマンパワーオンリーの運営です。シェレンベルガー氏が去ったら、元通りになりかねないわけです。行政面からの責任をもった補佐を担保する意味でも、市と楽団が一体になって日本オケ連加盟を成し遂げるのは大きなメリットである筈です。
 
 オーケストラ連盟の加盟にあたってのメリットは他にもあります。パブリシティ上の効果が見込めるということ。これは大きいですよ。現状、岡山フィルは「音楽の友」誌に演奏会評もほとんど掲載されていないばかりか、毎年1月号の「全国のクラシック音楽事情」には関西→広島→九州、という風に岡山は無視されてきました。岡山市がいくら「オーケストラのある街」と言ってみても、岡山から一歩外へ出たら全く通用していない。

 この地図を見れば無理もない事でしょう。日本のオーケストラ業界地図には、文字通り岡山は空白地帯、というよりよく見るとほとんど大阪に近い兵庫PAC管が岡山の位置に書かれている。本当の位置に書くとバランスが悪いからこうなるんでしょう。西宮より西には、広響と九響しかない訳ですから。
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 逆に、加盟を果たした静響は、音楽の友の連載特集記事「オーケストラのある風景」に掲載されるなど、やっぱり加盟団体は露出度が高い。
 シェレンベルガー&岡山フィルがどれほど凄い演奏を繰り広げても、それを発信できず、全国のオーケストラ業界的には存在しないのと同じことになってしまうのは、なんとも残念です。情報戦略の面でも加盟のメリットは大きいと思います。
 
 次は、連盟加盟を目指すことになった岡山フィルが果たすべき役割について、考えてみたいと思います。次回はちょっと時間を置いての更新になりそうです。