天井桟敷のつぶやきver3.1

瀬戸内地方のコンサート感想記録。since2006.7.26 ssブログ(旧so-netブログ)サービス停止のためはてなブログに引っ越してきました

岡山フィルの2024/25seasonプログラム

 岡山フィルの2024/25シーズン・プログラムの速報が昨年末の12月27日に発表になった。今年度=2023/24シーズンは年明けの発表だっただけに、年末発表にこだわった岡山フィル事務局に感謝したい。
 お正月になると「今年はどこに行こうか」と色々考える時間が出来る。その時にプログラムや日程が判っていないと、話題の俎上にも上がらない。だから、この時期の発表は大正解。
 プログラムは全て「予定」とのこと。まずは情報を見ていこう。
〜必聴!英雄伝説!〜
5月25日(土)14時?
指揮:秋山和慶
チェロ:上村文乃
チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲
ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」
第2回津山定期演奏会
〜必聴!英雄伝説!〜
5月26日(日)15時?
指揮:秋山和慶
チェロ:上村文乃
?チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲
?ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」
第81回定期演奏会
〜ウィーン夏物語〜
7月7日(日)14時?
指揮:キンボー・イシイ
ピアノ:津田裕也
モーツァルト/ピアノ協奏曲第20番
第82回定期演奏会
〜熟練のタクトが導くチャイコフスキーの世界〜
10月20日(日)14時?
指揮:秋山和慶
ピアノ:中桐望
チャイコフスキー/歌劇「エフゲニー・オネーギン」より“ポロネーズ
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
ベートーヴェン“第九”演奏会2024
〜巨匠秋山和慶が届ける円熟の「第九」
12月8日(日)14時?
指揮:秋山和慶
ソリスト:調整中
合唱:一般公募による「第九を歌う市民の会」
〜新春に聴く イタリアオペラの決定版〜
2025年1月26日(日)14時?
指揮:キンボー・イシイ
ソリスト:調整中
第1部 ワルツ ほか
第2部 イタリアオペラを中心としたオペラガラコンサート
第83回定期演奏会
〜巨匠達が創り出す極上のひととき〜?
3月2日(日)14時?
指揮:秋山和慶
ヴァイオリン:竹澤恭子
モーツァルト/歌劇「魔笛」より序曲
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲 
 「良くやった!」と「うわっ、ひっでえプログラムやなぁ」が入り混じっている、というのが正直な感想。

 まず一番に目を引くのが7月に取り上げる大曲:マーラー交響曲第5番だろう。岡山フィルでは初めて取り上げることになる。激しい情動表現・美しい旋律を駆使し、管弦楽の音を限界まで追求したオーケストラ音楽の究極の作品を、ようやっと岡山フィルの演奏で、最高の音響環境の岡山シンフォニーホールで楽しめるのだ。

 指揮は秋山さんではなくキンボー・イシイさん。ヨーロッパの歌劇場の現場叩き上げの指揮者で、岡山フィルとは2011年のニュー・イヤーコンサートで共演。旋律の歌わせ方・内声の響かせ方・テンポ感すべてが一体となって音楽へ瑞々しい生命を吹き込んでいくさまは、この方はちょっと、いやかなりモノが違うなと感じさせた。来年度は1月のニューイヤー・コンサート(イタリア・オペラのガラ・コンサート)の指揮を執る。ついにキンボーさんの真骨頂のオペラが楽しめるわけだ。できれば岡山フィルとは末永く関係を築いていってほしい指揮者。
 あと、去年の10月に実施された、ホルン・トロンボーンファゴットの首席奏者オーディション。恐らく候補者の方は半年の試用期間を経て、この7月定期おたりでデビューするのでは?いきなりマーラー5番ですか・・・それも注目点。。

 秋山さんの回で最注目なのは3月定期。ご自身の回想録「ところで今日、指揮したのは」で「私にって特別な曲」と述べられたブラームス交響曲第2番は、秋山さんの指揮者デビューの曲であり、ヴァンクーヴァー交響楽団、ロサンゼルス・フィル、アメリ交響楽団それぞれのデビュー時にもこの曲を選んだ勝負曲。岡山フィルでこの曲を取り上げるのは、何か意味がある筈。
 この回の全プロはシベリウス/ヴァイオリン協奏曲で、秋山さんとは北米時代から共演を重ねてこられた竹澤恭子さん。これは聞き逃せませんよ、絶対に!!
 私は数ある古今のヴァイオリン協奏曲の中で、このシベリウスの協奏曲が一番だと思う。特に第2楽章の美しさは他の作曲家の協奏曲の追随を許さない。それを秋山・竹澤のコンビで聴ける、この幸せを何と表現すればよいか。

 5月は、THE MOSTの元メンバーでもあった上村文乃さんを迎えてのチャイコ/ロココと、ベートーヴェンの英雄。英雄は2021年3月定期でも採り上げており、正直「間が詰まりすぎ」の感はあるが、秋山さんはこのところ英雄を重点的に取り上げているので(特に去年の近衛秀麿編の英雄は関西の話題をさらった、これは秋山さんの希望かも知れない。来年は12月の第九も指揮する。

 「うわっ、ひっでえプログラムやなぁ」と思ったのは10月定期。なんで「ひっでえ」のかと言えば、このプログラムは秋山さんが選んだのではない(最終的に承認されたとはいっても)と確信をもって断言できるからだ
 秋山さんの回想録に『オーケストラは古い曲ばかり演奏しているとマンネリに陥る。指揮者の中にはジャンルを決めている人もいるが、私はどんな曲でもこなせるようにしなくてはならないーーという信念を持っている』とある。だから、こんな酷いプログラムを自ら進んで組はずがないのだ。恐らく集客などを勘案して事務局が作った案ではないのか?
 秋山さんをよく知る音楽ファンがこのプログラムを見ると「岡山フィルはあまり重要視していないのかな」「こんな酷いプログラムを定期演奏会で秋山さんにやらせてはいけない」と思うだろう。

 秋山さんは常にそのオーケストラがやったことがない曲をレパートリーに組み込むことを、人生をかけてやってこられたから、メインがチャイコフスキー交響曲第5番の場合、例えば、隠れた十八番である交響曲第1番「冬の日の幻想」や、ピアノ協奏曲を採用するとしてもスパイスの効いた曲を選んでいたはずだ。
 中桐さんの起用は「地元出身音楽家にスポットライトを当てる」という従来からの方針だと思うが、これまでもこの先もいくらでも共演機会があるチャイコフスキーの協奏曲ではなく、中桐さんが履歴書に書けるような曲目でないと、本当の意味でスポットを当てることにはならないだろう。
 私はかねてから中桐さんのソロでバーンスタイン/交響曲第2番「不安の時代」や、シマノフスキー/交響曲第4番「協奏交響曲」などを聴いてみたいと思っている。プロコフィエフの協奏曲でもいい。中桐さんが自分のプロフィールに「2024年には岡山フィルとバーンスタイン作曲、交響曲第2番「不安の時代」を演奏、好評を博す」と書くような、彼女の音楽家人生のマイルストーンとなるようなコンサートに立ち会いたいのだ。

 まあ、大きな不満はこの10月定期のプログラムだけなのだが、こういうプログラムを組まれると、「そろそろ岡フィルのコンサート全てに付き合う必要もなくなったかな?」という気になってきた。来年度はマイシートを更新せず、福山リーデンローズで開始する広響や京響による本格的な「福山定期演奏会シリーズ」のプログラムも見極めながら、行きたいものをだけをつまみ食いしようかと考えている。