天井桟敷のつぶやきver3.1

瀬戸内地方のコンサート感想記録。since2006.7.26 ssブログ(旧so-netブログ)サービス停止のためはてなブログに引っ越してきました

佐藤晴真 The Senses 〜ブラームス作品集〜

 ※この記事は、「hironominのプレイリスト」の記事を転載しました。
 10月にTHE MOSTのコンサートで、初めて佐藤晴真さんの生演奏を聴き、言葉で表現しようのない暖かくて美しい演奏を聴いて、こんな音がチェロから出るんだ。」とビックリした。
 まさに、「一目惚れ」ならぬ『一聴惚れ』である。
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The Senses ブラームス作品集
チェロ:佐藤晴真 ピアノ:大伏啓太
ブラームス/チェロ・ソナタ第2番
 〃 /メロディーが導くように
 〃 /森に覆われた山の上から
 〃 /死、それは涼しい夜
 〃 /子守唄
 〃 /チェロ・ソナタ第1番
 私はコンサート前には出来るだけ予習(楽曲やソリストの音源をあらかじめ)するタイプで、もし、彼がTHE MOSTのコンサートの前に音源を出していたら、予習していただろう。しかし、佐藤さんの演奏を「予習」することなく、しかも、コロナ禍で生演奏から8ヶ月も遠ざかって聴いたものだから、彼のこの美音・麗音を聴いた瞬間の衝撃は忘れられないものになったと思う。

 コロナ禍の影響でレコーディングも延期になり、半年遅れで発売されたようだ。しかし、ライナーノートによると、そんなハプニングはレコーディングに好影響を及ぼしたらしく、活動自粛期間中を挟んだ後の収録では佐藤さんとピアノの大伏さんのコンビネーションが熟成し、コロナ禍以前よりも手応えのある演奏が録れたようだ。

 佐藤さんは、ドイツ音楽の正統的な演奏家の登竜門とされる、ミュンヘン国際コンクールに日本人で初めて優勝。もちろん技術的にも申し分ないのだけれど、若くて圧倒的才能を持つ『俊英』にありがちな尖ったところがなく、風格のある落ち着いた演奏で、奏でる音からは、美しさ・麗しさ・気品にあふれている。

 低音が重厚なのに暖かい「声色」でよく歌うのだ。例年よりも寒いこの冬に、この演奏を聴いていると、地面に暖かさが拡がっていき、聴き手の足元からその暖かさが染み渡ってくるような感覚になる。

 2曲のチェロ・ソナタの演奏も絶品だが、このアルバムの聞き所は、ブラームスの4つの歌曲のチェロ編曲版。チェロが持つ人間の声のような暖かさと、佐藤さんの奏でる歌を存分に堪能できる。