オーケストラキャラバン
日本センチュリー交響楽団福山公演
指揮:飯森範親
チェロ独奏:佐藤晴真
コンサートマスター:松浦奈々
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調
シベリウス/カレリア組曲
〃 /交響曲 第7番 ハ長調
〃 /交響詩「フィンランディア」
2023年9月18日 福山リーデンローズ大ホール
日本センチュリー交響楽団福山公演
指揮:飯森範親
チェロ独奏:佐藤晴真
コンサートマスター:松浦奈々
ドヴォルザーク/チェロ協奏曲ロ短調
シベリウス/カレリア組曲
〃 /交響曲 第7番 ハ長調
〃 /交響詩「フィンランディア」
2023年9月18日 福山リーデンローズ大ホール
・何と言っても念願かなって聴くことができたシベリウスの7番!東瀬戸内市地域では、まずお目にかかれないプログラムで、秋山&広響がシベリウスチクルスをしたときがチャンスだったが、3,5番は聴けたが7番は予定が合わず・・・。そこにオーケストラキャラバン事業で降って湧いたようなチャンスが到来。
・客席は3階席閉鎖で、2階席も人はまばら、1階席も後ろ半分は空席が目立つ感じで、35%(700名)ぐらいの入りか、と思っていたら、中国新聞の記事で600人と判明。事前に指揮の飯森さんの動画で情報発信していたり、昨年に同ホールのリサイタル・シリーズに招聘した佐藤晴真さんを起用するなど、努力は垣間見えるが、根本的なところに問題があると思う。それは最後に触れる。
・諸事情があり(これについても記事の最後に述べる)前売り券を買わずに当日券を購入したのだが、ステージ至近距離は佐藤晴真めあてのお客さんで埋まっていたほかは、まさに良席選び放題の状態。空席が多いときのリーデンローズは、典型的な「風呂場音響」になるので、天井桟敷族の私ではあるが、ステージに近い直接音が降り注ぐ2階サイドの席にする。
・このリーデンローズは、クリスティアン・ツィメルマンとグラモフォンのスタッフがたいそう気に入り、シマノフスキ作品集のレコーディングを行った「名ホール」として名を轟かせつつあるが、ピアノ演奏は良いとしても、オーケストラだと客席が大方埋まらないと残響が豊富すぎて各楽器の音の分離が甘いと感じるのだ。
・編成は1stVn10-2ndVn8-Vc5-Va6、下手にCb5の10型変則2管編成。2018年6月以来のセンチュリー響だったが主要メンバーはほぼ残っており、耳に馴染んだセンチュリーのサウンドを堪能した。その一方でObに大森さん(大フィル)、チェロ首席に金子鈴太郎さんなどの助っ人を入れていた。そうそう、3番トランペットには岡山フィルの横田さんのお顔も。
・さて、演奏順不同になるが、まずは念願かなったシベリウス/交響曲第7番の感想から。「滋味深い」「枯淡の境地」・・・この曲に対する私のイメージを吹き飛ばすようなセンチュリーの快演だった。
・こんなにスケールが大きい曲だったのか!というのが第一印象。他にも、「こんなリズムが内在する曲やったんや」「脈絡なく鳴っているように思っていた場面も、はっきりと美しい和声が聴こえてくるやん」「ここでこんな響きになるんや!」などなど、発見の連続だったのだ!やっぱり、生で、いい演奏で聴かなきゃわからんもんです。
・この曲、この日の4日後の第275回定期演奏会で取り上げる曲なんですよね。本拠地の定期演奏会と同一曲目を持ってきた飯森さん、センチュリー響の決断に感謝してもしきれない。
・コロナ前はハイドンマラソンにも通って、このオケの超高機能アンサンブルを体験した者とすれば、アンサンブルの精度、という点ではたぶん定期演奏会ではもっと完成度を上げていくんだろうな?という感じはあった。しかし、オケのハーモニー、音のテクスチャの心地良いこと心地良いこと!このオケは、音色に徹底的にこだわってるよなあ。強奏する場面でも音が濁ったりベチャッとなったり絶対にしない。ホントに素晴らしい時間だった。
・さて前半のドヴォルザークのチェロ協奏曲。ソリストは佐藤晴真さん。実は曲目とソリストは岡山フィルの10月定期ともろ被りで、指揮も秋山さんの教え子でもある飯森さんという、『聴き比べ』の興味も尽きない組み合わせである。
・佐藤さんは、福田廉之介くんの主宰する「THE MOST」の初期メンバー。ドヴォルザークの「森の静けさ」のソロを聴いて、その理屈なしに魅力的な美音に惚れた。
・なんでこんなに切ないほど美しい音が奏でられるのか。涙腺緩みっぱなし。ソロに付けるセンチュリーのオケパートも唖然とする巧さが。コンマス松浦さんとの二重奏も最高でした。佐藤さんはホームページを拝見すると、今年の10月だけで7回もコンサートが組まれている。どこもかしこも引っ張りだこである。
・第1、第3楽章も魅力的なメロディーが洪水のように聴き手を魅了するのだが、私はこの曲のキモは、第2楽章をどのように「語る」かにあると思っている。チェリストとオケによって、人生を振り返る老人の風格であったり、叶わぬ恋の切なさであったり・・・、さて、佐藤さんとセンチュリーの共演は、「若者の旅立ち」という言葉が似合うような演奏だたように思う。大きな旅に出る前でもいし、就職・進学でもいいだろう。純白の未来に向かって大きな希望と不安を抱えながら出発する若者の爽やかさや、それを見守る親の安堵や寂しさ、色んな感情がないまぜになるような、表現だった。
・アンコールはカタルーニャ民謡(カザルス編曲)の「鳥の歌」。超絶技巧のハーモニクスにも耳を奪われるが、やはり彼の美音に魅了される時間。
・後半の1曲目はカレリア組曲。シンコペーションがキモになっている曲だが、軽快に颯爽とした演奏。文句なしにかっこいい。日本のオケだと「ズンチャッズンチャッ」とズンドコ節になりがちな曲なのだが、流石、センスの塊の飯森さんとセンチュリーのリズム感が素晴らしい。リーデンローズの空間を響かせるツボみたいなもの得たようで、かるーく弾いてるようでいて誠に力強い演奏。
・シベリウス7番のあと、最後はフィンランディアで締める。本来であればシベリウス7番で終わって、フィンランディアはプログラムに載せずに、ゲネ1回通してぶっつけ本番アンコール!なノリでやるのだろうが、きちんと仕上げて披露するのがセンチュリーらしい。冒頭から金管をブリブリに鳴らし、10型とは思えない弦の芳醇な音。「スオミの歌」の部分の木管も素晴らしい、クラリネット持丸さんやフルート永江さんの「ザ・センチュリー」といえる気品ある音と、かなり厚めに鳴らす大フィル大森さんの音が意外に相性が良く、聞き惚れる。大団円の集結でお開き。
最後に少しリーデンローズへの 愚痴 提言
・冒頭に書いた通り、ホールの色々な販促にも関わらず、客席の入りは低調だった。だが販促・宣伝の前にやることがあるだろう、というのが僕の意見。
・岡山県在住者を主要ターゲットに、ネットチケットの充実など遠方からの「チケットを買いやすくする」という基本中のキホンが出来ていないのてある。
・今どきホール独自のネットチケットも無く、ぴあやローチケで買おうと思っても座席指定で買えないんですよ。プレイガイドは福山市内と広島市にしか無いから、こんなに近くて便利なのに岡山県在住者は本当にチケットが買いにくい。ってことで私も早々に当日券で行くことにしてました。
・これって結構機会損失だと思うんですよ。前売りで買っていないと、当日の欠席率は高くなる。まだまだ外も暑いし、他の用事も済ませたいし、福山までの快速サンライナーがコロナを機に廃止されて各駅停車しかないし、もう行くのやーめた。と直前まで思っていました。シベリウス7番が僕の重い腰を上げるキッカケだった。
・岡山シンフォニーホールも2000年代頃は集客が低迷していたが、岡山フィルの楽団改革と、ネットチケットの導入などのホールの営業改革で、かなり集客は伸びた。今は福山・備後だけでなく、四国からも結構集客してますよ。福山市も岡山市と同様に、市内の需要だけではホールを満席にはできない。ホール事務局さん、よーくお考えを。
・これって結構機会損失だと思うんですよ。前売りで買っていないと、当日の欠席率は高くなる。まだまだ外も暑いし、他の用事も済ませたいし、福山までの快速サンライナーがコロナを機に廃止されて各駅停車しかないし、もう行くのやーめた。と直前まで思っていました。シベリウス7番が僕の重い腰を上げるキッカケだった。
・岡山シンフォニーホールも2000年代頃は集客が低迷していたが、岡山フィルの楽団改革と、ネットチケットの導入などのホールの営業改革で、かなり集客は伸びた。今は福山・備後だけでなく、四国からも結構集客してますよ。福山市も岡山市と同様に、市内の需要だけではホールを満席にはできない。ホール事務局さん、よーくお考えを。
・新幹線ホームから見た、令和の大改修を経た福山城。各停があまりにまどろっこしいので、帰りは新幹線にしたのだが、3連休最終盤の上りだったため、えらい混雑でした。センチュリーの楽員さんも乗られてて、ホントお疲れ様でした。